「野菜350g」に届いている人は5人に1人でした。国が実際に言っているのは「あと70g」です

1日の野菜350gに届いている人は5人に1人であることを示したアイキャッチ画像 栄養学

「1日に野菜を350g」

聞いたことがない人はいないと思います。私も塾で保護者の方に食事の話をするとき、この数字を使ったことがあります。

平均は256g。だいたい100g足りない、とよく紹介されます。

なんとなく、みんなが少しずつ足りていない絵を想像していました。あと一歩、みたいな。

調べてみたら、そういう話ではありませんでした。

350gに届いているのは、5人に1人です

令和5年の国民健康・栄養調査で、1日の野菜が350g以上あった人の割合です。

男性が25.2%、女性が21.9%。20代女性にいたっては11.6%でした。

平均256gという数字の中身は、「みんなが少しずつ足りない」ではありません。届いている2割と、届いていない8割です。

一日の野菜が350g以上ある人の割合は男性25.2%、女性21.9%、20代女性は11.6%であることを示した横棒グラフ|野菜350g 達成率

ちなみに、いちばん食べているのは70歳以上でした。男性28.5%、女性27.2%。若いほど少なく、年齢が上がるほど増えます。

→ 「平均より上か下か」で考えるとぼやけます。350gは、5人に1人しか立っていない場所だと思っておくほうが実態に近いです。

「野菜を食べられない理由」の1位は、「特にない」でした

ここがいちばん意外でした。

同じ調査で、「野菜を十分に食べる」ことの妨げになっている点を聞いています。最も多かった答えは「特にない」で、男性59.6%、女性58.8%。

「仕事や家事が忙しくて時間がない」は男性9.8%、女性14.7%。「経済的に余裕がない」は男性5.2%、女性8.2%です。

つまり、足りていない最大の理由は時間でもお金でもありませんでした。妨げを感じていないのです。

野菜を十分に食べる妨げとして最も多い回答は特にないで約6割、忙しくて時間がないは1割前後、経済的に余裕がないは1割未満であることを示した図|野菜 食べられない理由

もう一段、厳しい数字があります。1日70g未満しか食べていない層で、「関心はあるが改善するつもりはない」と答えた割合が最も高くなっていました。男性24.9%、女性20.7%です。

いちばん足りていない人が、いちばん動かない

→ 情報を足しても届きにくい構造です。だからこの記事も「食べましょう」では終わらせません。数字の意味と、今日変えられる1手だけ持って帰ってもらうほうがいいと思っています。

350gは、「野菜がいいから」で決まった数字ではありません

では、この350gは何なのか。

健康日本21(第三次)の目標として掲げられている数字です。令和14年度までに、野菜摂取量の平均値を350gにする。同じ枠で果物200g、食塩7gも設定されています。

根拠のところに、こう書かれています。

食事による摂取と生活習慣病(NCDs)との関連から食事摂取基準において目標量が設定されている栄養素のうち、食物繊維及びカリウムは野菜からの摂取寄与度が高い

順番が逆なんです。「野菜が体にいいから350g」ではありません。食物繊維とカリウムを満たそうとすると、その供給源として野菜の比重が大きい。だから野菜の量で管理している、という組み立てです。

350gは野菜そのものを理由に決まった数字ではなく、食物繊維とカリウムの目標量を満たすための供給源として野菜の量で管理されていることを示した流れ図|野菜350g 根拠

しかも、その土台にある食物繊維の目標量そのものが理想値ではありません。「実行可能性を重視して」置かれた仮の数字です。食物繊維の目標量を厚労省の資料で確かめた記事に書いたとおりで、厚労省自身が「tentative(仮の)」と注記しています。

つまり350gは、届く見込みで置いた数字を土台にした、さらにその先の数字ということになります。

→ 350gは集団の平均を動かすための行政目標です。個人が毎日達成すべきノルマとして設計された数字ではありません。

統計の「野菜」に、いも・きのこ・海藻は入っていません

自分で数えるときの落とし穴です。

国民健康・栄養調査の「野菜類」は、緑黄色野菜/その他の野菜/野菜ジュース/漬け物、の4つで構成されています。日本食品標準成分表の分類にそろえたものです。

つまり、こうなります。

  • じゃがいも、さといも、さつまいも → いも類なので入らない
  • しいたけ、しめじ、えのき → きのこ類なので入らない
  • わかめ、ひじき、のり → 藻類なので入らない
  • 野菜ジュース → 入る
  • 漬け物 → 入る

国民健康栄養調査の野菜類にはいも類ときのこ類と藻類が含まれず、野菜ジュースと漬け物は含まれることを対比した図|野菜 数え方

肉じゃがやきのこの味噌汁で「野菜をとった」と思っていると、統計上の野菜はほとんど増えていません。逆に、野菜ジュースを飲んだ日は数字が上がります。

ただし数字が上がることと、350gの根拠になった栄養素が満たされることは別です。ジュースは搾る過程で食物繊維が減ります。

→ いも・きのこ・海藻が体に悪いという話ではまったくありません。「350gを数える」ときだけ、対象が違うという話です。

日本人の死亡に関わる要因として、野菜の少なさは上位ではありません

これは書くか迷いました。書きます。

厚生労働省の資料が引用している、日本の危険因子別の関連死亡者数(2019年)という推計があります。上位にあるのは高血圧、喫煙、空腹時血糖値が高いこと、腎機能障害、LDLコレステロールが高いこと。

「野菜の少ない食事」は、かなり下のほうです。食塩の多い食事や全粒穀物の少ない食事より下にあります。

日本の危険因子別の関連死亡者数では高血圧や喫煙や高血糖が上位を占め、野菜の少ない食事は下位にあることを示した順位図|野菜 死亡リスク

野菜を軽視していいという意味ではありません。ただ、350gに届いていないことを、健康の落第点みたいに受け取る必要はないとは言えます。

血圧や血糖やたばこのほうが、桁が違うところにあります。

→ 罪悪感で野菜を増やそうとすると続きません。8割が届いていないのだから、まず届かない前提で、戻ってくるものが大きい足し方を選ぶほうが現実的です。

国が実際に示している数字は、「あと70g」です

350gという遠い目標とは別に、同じ資料にこう書かれています。

日本人において野菜の摂取を70g増やすことにより循環器病の疾病負荷が小さくなると予測されている

70g。日本人を対象にした推計から出ている数字です。

350gまであと94g、ではありません。まず70gです。小鉢1つ、ほうれん草のおひたしなら1人前くらい。

350gという遠い目標ではなく、まず70g増やすことで循環器病の疾病負荷が小さくなると予測されていることを示した図|野菜 あと70g

紛らわしいので分けておきます。「野菜料理1皿はおよそ70g」という言い方も広く使われていますが、あれは350gを5皿に割った換算です。ここで言う70gは、日本人を対象にした推計から出てきた増分のほうです。たまたま同じ数字ですが、出どころが違います。

そして、厚生労働省が毎年9月にやっている食生活改善普及運動のテーマは「まずは毎日、あと一皿ずつ野菜と果物をプラス」。国自身が、350gではなく1皿で語っている

→ 目標を350gから70gに置き換えます。ここなら今日変えられます。

同じ「1皿」でも、緑黄色の葉野菜なら増える栄養素が桁で違います

そして、何を足すかで結果がまったく変わります。

現在の食事にプラス1皿したときの栄養素の増え方を、国立の研究所が試算しています。

足した野菜 ビタミンA 葉酸 ビタミンC カリウム
緑黄色の葉野菜 +39% +39% +26% +17%
緑黄色野菜(葉以外) +43% +11% +22% +9%
その他の野菜 +1% +11% +11% +7%

葉酸で比べると、緑黄色の葉野菜は39%、その他の野菜は11%。ビタミンAにいたっては39%と1%です。

プラス一皿で増える栄養素は緑黄色の葉野菜ならビタミンA39%葉酸39%だがその他の野菜では1%から11%にとどまることを示した比較図|緑黄色野菜 プラス一皿

同じ「野菜を1皿増やした」でも、中身が違います。

実際の摂取量を見ると、緑黄色野菜は男性78.9g、女性80.9g。その他の野菜が男性183.3g、女性169.7gです。足りていないのは緑黄色野菜のほうでした。

→ 増やすならほうれん草・小松菜・春菊・チンゲン菜あたりの葉物から。同じ手間で戻ってくるものが違います。

今日やること

# やること なぜ
1 目標を350gではなく「あと70g」に置き換える 国の推計で示されているのはこちら。小鉢1つ分
2 足す1皿を、緑黄色の葉野菜に決めておく 同じ1皿でも増える栄養素が桁で違う
3 味噌汁やスープの具を葉物にする 加熱でかさが減るので70gは入れやすい
4 いも・きのこ・海藻は「野菜」に数えない 体にはいいが、350gの対象には入っていない
5 350gに届かないことを気にしない 8割が届いていない。血圧やたばこのほうが桁が大きい

あと70gを緑黄色の葉野菜で足すこと、味噌汁の具を葉物にすること、いもきのこ海藻は数に入れないことなど五つの手順を順に示した図|野菜 増やし方

念のため

・350gは集団の平均を動かすための目標で、個人の必須量ではありません

・持病で野菜やカリウムの量に指示が出ている方は、その指示が優先されます

・腎臓の病気などでカリウム制限がある方は、自己判断で増やさず主治医にご相談ください

よくある質問

Q1. 350gは1食ではなく1日の量ですか?

1日の量です。健康日本21(第三次)で、令和14年度までに野菜摂取量の平均値を350gにするという目標として設定されています。

Q2. 平均256gなら、あと94g足せばいいのでは?

平均を見るとそうなります。ただ達成している人は男性25.2%、女性21.9%で、分布はかなり割れています。ご自身が平均の位置にいるとは限りません。まず1週間、実際に数えてみるほうが確かです。

Q3. 野菜ジュースは350gに数えていいですか?

国民健康・栄養調査の分類では、野菜ジュースは野菜類に含まれます。ただし搾る工程で食物繊維は減ります。350gという数字の根拠が食物繊維とカリウムである以上、同じものとして扱うのは無理があります。補助として考えるのが妥当です。

Q4. サラダを食べていれば足りますか?

生野菜はかさがあるので、思ったより重量が伸びません。加熱してかさを減らすほうが70gは入りやすいです。汁物や炒め物のほうが現実的だと思います。

Q5. 緑黄色野菜はどれくらい必要ですか?

今回参照した資料に緑黄色野菜の内訳目標は書かれていませんでした。実際の摂取量は男性78.9g、女性80.9gです。まずは足す1皿を葉物にする、という考え方でいいと思います。

Q6. トマトやにんじんは緑黄色の葉野菜に入りますか?

葉物ではありません。試算では「緑黄色野菜(葉以外)」として別に集計されていて、ビタミンAは高い一方、葉酸の増え方は葉野菜に届きませんでした。どちらが上ということではなく、性格が違います。

Q7. 子どもにも350gですか?

健康日本21(第三次)の350gは成人の平均値に対する目標です。子どもの量はこの数字とは別に考えてください。学校がある日とない日で栄養が変わる話は、給食のない日が落とし穴になる記事で扱っています。

Q8. 野菜を増やせば健康になりますか?

そう単純には言えません。日本の危険因子別の関連死亡者数の推計では、野菜の少ない食事は高血圧や喫煙よりかなり下位にあります。野菜だけで健康が決まるわけではない、というのが数字の側から見た姿です。

てびきの場合

以前この食物繊維の記事を書いたときに、朝食に納豆と味噌汁を足すようにした話を書きました。

今回この記事のために自分の野菜を数えてみたら、味噌汁の具がわかめと豆腐の日が多くて、統計上の野菜としてはほとんど計上されていませんでした。わかめは藻類なので入りません。

具を小松菜に替えるところから始めています。体調がどうなったという話はしません。まだ数えているだけです。

あわせて読みたい

ご利用にあたっての注意

本記事は栄養に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。紹介した数字は集団を対象とした調査・推計であり、当てはまり方には個人差があります。腎臓の病気などでカリウムや水分に制限がある方、持病のある方、通院中・服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断で食事を変えず、医師・薬剤師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。

信頼できる公的情報

この記事を書いた人

てびき

てびき
学習塾を営む二児の親/健康・栄養の情報を発信
    • コロナ以前から仕事のなかで健康と栄養の知識を学び続けてきました
    • 子どもの食育に取り組み、塾では大人にも栄養の話をしています
    • 自身のうつの経験から栄養に行き着き、ダイエットも実践中
    • 医療系の国家資格は持っていません。だから出典を明示して書いています

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免責:本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。体調に不安がある場合は医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

最終更新: 2026年8月10日

更新履歴

    • 2026-08-10 初版公開

参考にした資料

  • 厚生労働省 健康・生活衛生局健康課 栄養指導室「健康日本21(第三次)における野菜摂取量の増加の重要性について」令和7年度「野菜の日」WEBシンポジウム資料(2025年8月21日)
  • 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
  • 厚生労働省「健康日本21(第三次)推進のための説明資料」
  • 厚生労働省「『毎日プラス1皿の野菜』のとり方を提案します – 緑黄色の葉野菜を中心にプラス1皿 -」(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所による平成26年国民健康・栄養調査結果の分析)
  • Mo X, et al. Nutritional and metabolic risk factors and the burden of cardiovascular disease in Japan. BMC Public Health. 2019;19(1):707.
  • Nomura S, et al. Population health and regional variations of disease burden in Japan. Lancet Reg Health West Pac. 2022;21:100377.
  • Wang X, et al. Fruit and vegetable consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer. BMJ. 2014;349:g4490.

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