水道水の「不検出」は、ゼロという意味ではありません。PFAS検査結果の数字の読み方

水道水の検査結果にある不検出がゼロではなく基準値の10分の1より下を意味することを示したアイキャッチ画像 健康

自分の住んでいる地域の水質検査結果を開くと、たいてい「不検出」と書いてあります。

私はそれを見て、ゼロだと思っていました。

実際には違います。「不検出」は、ある値より下だったという意味です。そしてその「ある値」がいくつなのかは、制度のほうで決まっています。

数字の探し方は前の記事に書きました。ここから先は、探し当てたあとの話です。

「不検出」は、基準値の10分の1より下だったという意味です

水質検査には「定量下限値」というものがあります。その検査で、きちんとした精度で測れる一番低い濃度のことです。

そして国の通知が、こう決めています。

水質基準項目及び水質管理目標設定項目(農薬類を除く。)に関する水質検査方法における定量下限は、原則として基準値及び目標値の10分の1であること。

PFASの基準値は50ng/L。その10分の1なので、定量下限値は5ng/Lあたりになります。

実際、神奈川県営水道は検査結果をこう書いています。「不検出(定量下限値5ng/L未満)」。通知どおりの値です。

埼玉県企業局は、さらに踏み込んで説明しています。「〇〇未満」とは定量下限値より低い濃度という意味で、定量下限値よりも低く検出される場合もあります、と。

水質検査の「不検出」が定量下限値未満を意味し、その定量下限値は原則として基準値の10分の1に設定されることを示した図|PFAS 不検出 意味

→ 「不検出」を見たら、ゼロではなく「基準の10分の1より下」と読み替えてください。安心していい数字ではありますが、ゼロではありません。

法令に書いてあるのは「50ng/L」ではなく「0.00005mg/L」です

ここでつまずきます。

報道やパンフレットは「50ng/L」と書きます。ところが自治体のPDFを開くと「0.00005mg/L」と出てくることがある。桁が5つずれて見えます。

法令の本文を確かめました。水質基準に関する省令の第二十項に、PFOSとPFOAが並んでいます。基準は「〇・〇〇〇〇五mg/l以下であること」。

省令の本文に ng/L という単位は一度も出てきません。 法令はすべてmg/L系で書かれています。

環境省の報道発表は、その差を注記で埋めています。「0.00005mg/L ※0.00005mg/L = 50ng/L」。同じ値です。

法令本文の0.00005mg/Lと報道の50ng/Lが同じ値であることを示した単位換算の図|PFAS 基準値 ng/L mg/L

→ 資料によって単位が違うだけで、0.00005mg/L と 50ng/L は同じです。桁の多い方を見ても慌てないでください。

見るのはPFOSとPFOAの合計値です。片方ずつではありません

省令の書き方が独特です。

PFOSとPFOAは、別々の項目ではありません。第二十項という1つの行に、2つまとめて置かれています。 そして値も1つだけ。

つまり基準の50ng/Lは、2物質の合算値です。環境省も暫定目標値の時代から「PFOS及びPFOAの合算値で50ng/L以下」と説明してきました。

PFOSとPFOAが省令の同じ項にまとめられ、基準値は2物質の合算値であることを示した図|PFOS PFOA 合算値 基準

→ 検査結果の表にPFOSとPFOAが別の列で載っていたら、足してから50と比べます。片方だけ見て安心しない。

その数字は、あなたの家の蛇口の水とは限りません

ここがいちばん意外でした。

水道法施行規則の第15条は、採水の場所を「給水栓を原則とし」と定めています。給水栓とは蛇口のことです。

ところが、そのあとに長いただし書きが続きます。対象に挙がっているのは「11の項から21の項まで」。PFOSとPFOAが置かれた20の項は、ちょうどこの中に入っています。

基準の表中三の項から五の項まで、七の項、九の項、十一の項から二十一の項まで(中略)については、送水施設及び配水施設内で濃度が上昇しないことが明らかであると認められる場合にあつては、給水栓のほか、浄水施設の出口、送水施設又は配水施設のいずれかの場所を採取の場所として選定することができる。

つまりPFASは、法令上蛇口ではなく浄水場の出口で測ってもいい項目だということです。

しかも「給水栓」で測っていても、それは配水系統ごとに選ばれた代表地点です。あなたの家の蛇口ではありません。

PFASの採水地点が浄水施設の出口・送水施設・配水施設・給水栓のいずれでもよく、公表値が自宅の蛇口の水とは限らないことを示した図|PFAS 水質検査 採水地点

運用は事業者ごとに違います。東京都水道局は令和8年度の水質検査計画で、「浄水施設の出口を選定できる項目についても、原則、蛇口(給水栓)で検査します」と独自の上乗せを書いています。書いていない事業者もあります。

→ 確かめる場所が決まっています。水質検査計画には「採水の場所」を書く義務があるので、そこを見てください。毎年度の開始前に作られ、公表されています。

「不検出」と「基準以下」は、同じではありません

全国の実測を見ると、この差がはっきり出ます。

令和6年度(9月末時点)に検査した1,745事業の内訳です。

  • 不検出 …… 1,413事業
  • 検出されたが5ng/L以下 …… 115事業
  • 5ng/Lを超え25ng/L以下 …… 187事業
  • 25ng/Lを超え50ng/L以下 …… 30事業
  • 50ng/L超(基準超過) …… 0事業

令和6年度に検査した1745事業のうち不検出が1413事業、5から25ng/Lが187事業、25から50ng/Lが30事業だったことを示した分布図|PFAS 水道水 検出状況

8割は不検出。でも217事業は、検出されたうえで基準以下です。 どちらも「基準を超えていない」ですが、意味は違います。

→ 自分の地域がどちらなのかは、公表値を見ないと分かりません。「基準以下でした」という一文だけでは足りないということです。

この「検出されたが基準以下」という読み方は、水道水だけの話ではありません。野菜の残留農薬でも同じ形になります。市販品の実測では、検出された農薬は基準値の0.26〜14.2%でした。→ 野菜の農薬は、洗うより先に「どこに付いているか」で決まります

「超過ゼロ」が意味を持つのは、分母とセットのときだけです

年度ごとの基準超過事業数は、こう推移しています。

令和2年度11 → 3年度5 → 4年度4 → 5年度3 → 6年度0。

減っています。ただ、同じ期間に検査した事業数も動いています。

466 → 801 → 869 → 1,325 → 1,745。

PFASの超過事業数が11から0に減る一方で検査実施事業数が466から1745に増えたことを並べて示した図|PFAS 超過 事業数 推移

分母が3.7倍になったうえでの「ゼロ」です。 測る場所が増えても超過が出なくなった、というほうが実態に近い読み方になります。

最新の集計では、令和2年4月から令和7年8月末までに超過した事業は19。これは単年度ではなく累計で、18事業は対策済みで基準を下回っています。

→ 「超過ゼロ」を見たら、何事業を検査した結果なのかを横に置いて読んでください。これは農薬の使用量を数えた記事とまったく同じ話です。

基準を超えても、いきなり断水にはなりません

「超えたら水が止まるはずだから、止まっていない=大丈夫」と考えたくなります。そうではありません。

国土交通省が2026年3月にまとめた対応マニュアルは、こう書いています。直ちに濃度を下げるのが難しいときは、住民に飲用を控えるよう周知したうえで、給水を継続すると。

水道法には給水停止の規定もあります。ただしそれは「人の健康を害するおそれがあることを知つたとき」で、PFASの基準超過がこれに当たるかどうかを国は明示していません。

PFAS基準超過時の標準的な対応が給水停止ではなく給水継続と飲用を控える周知であることを示した流れ図|PFAS 基準超過 対応

代わりに義務づけられているのが情報提供です。定期の検査結果は毎年1回以上。臨時の検査結果や非常時の事項は「必要が生じたときに速やかに」。

断水しているかどうかは判断材料になりません。 見るのは、水道事業者からのお知らせのほうです。

浄水器を考えるなら、理由はPFASの外にあります

ここまでの数字を素直に読むと、PFASを理由に浄水器を選ぶ話にはなりません。基準超過は年々見つからなくなっていて、8割は不検出です。

それでも浄水器を考える理由は、別のところに書いてあります。

残留塩素。 水道法施行規則は、蛇口の水が遊離残留塩素0.1mg/L以上を保つよう塩素消毒することを義務づけています。安全のために必要な下限です。一方で上限にあたる法令上の基準値はなく、あるのは法的拘束力のない目標値1mg/L以下だけ。そして環境省の資料自身が、残留塩素は「水にいわゆるカルキ臭を与える」「濃度の高い場合には水の味をまずくし、特に、緑茶の味を悪くする」と書いています。

総トリハロメタン。 基準値は0.1mg/L以下。その塩素消毒の副生成物として生まれる物質が、法定の基準項目になっています。

建物の中の配管。 給水装置は個人の所有物だと国土交通省が明記しています。水道事業者の測定点より下流です。鉛製給水管は令和5年度末で全国に1,915,861件残っていて、国は令和8年1月に解消の方針を出しました。

残留塩素の下限は法令義務で上限は目標値のみであること、給水装置が個人所有物であることを示した制度の切れ目の図|浄水器 検討 理由

ただし、同じ国土交通省の広報物がこうも書いています。通常の使用では水道法に定められた水質基準に適合しており、直ちに健康を及ぼすことはありません、と。

→ 危ないから浄水器、ではありません。制度の切れ目が「建物の中」にあるという話です。規格の見方は別の記事にまとめました。

今日やること

# やること なぜ
1 「不検出」を「基準の10分の1より下」と読み替える 定量下限値は原則として基準値の10分の1。PFASなら5ng/L
2 0.00005mg/L と 50ng/L を同じ数として扱う 法令はmg/L、報道はng/L。桁が違って見えるだけ
3 PFOSとPFOAは足してから50と比べる 基準は2物質の合算値
4 水質検査計画で「採水の場所」を見る PFASは浄水場の出口で測ってもよい項目。記載義務がある
5 「超過ゼロ」は検査した事業数とセットで読む 分母が466から1,745に増えている

不検出の読み替え、単位の換算、合算値、採水の場所の確認、分母とセットで読むという五つの手順を示した図|PFAS 検査結果 読み方

念のため

・定量下限値は事業者や分析方法によって変わることがあります。公表資料の値をご確認ください

・ここで扱ったのは水道水の話です。井戸水や地下水は別の枠組みになります

・水の安全について不安が続くときは、お住まいの水道事業者にお問い合わせください

よくある質問

Q1. 「不検出」なら飲んでも大丈夫ですか?

基準値の10分の1より低いという意味なので、基準の観点からは問題のない水準です。ただしゼロという意味ではありません。

Q2. 定量下限値はどこに書いてありますか?

水質検査結果の資料や、事業者によっては定量下限値の一覧表に書かれています。神奈川県営水道のように、検査結果の本文に「不検出(定量下限値5ng/L未満)」と併記している例もあります。

Q3. うちの自治体の資料は mg/L 表記でした。危ないのでしょうか?

単位が違うだけです。0.00005mg/L が 50ng/L にあたります。法令の本文がmg/L表記なので、それに合わせている資料は多くあります。

Q4. PFOSが3、PFOAが4と書いてありました。基準内ですか?

合計7ng/Lなので、基準の50ng/Lは下回っています。基準は合算値で見ます。

Q5. 公表されている値は、うちの蛇口の水ですか?

とは限りません。PFASは法令上、浄水施設の出口や配水施設で採水してもよい項目です。どこで採ったかは水質検査計画に記載されています。

Q6. マンションに住んでいます。同じように考えていいですか?

受水槽がある建物では、水道事業者の測定点より下流の水を使うことになります。受水槽の管理は建物側の責任で、PFASの定期検査は含まれていません。

Q7. 検査は年に何回行われますか?

おおむね3か月に1回以上が基本です。条件を満たせば回数を減らせる仕組みもありますが、PFASについては当面その適用ができないと国土交通省が示しています。

Q8. 基準を超えたら教えてもらえますか?

臨時の水質検査の結果や非常時の事項は、必要が生じたときに速やかに情報提供する義務が水道事業者にあります。

てびきの場合

前の2本にも書いたとおり、我が家でも飲み水をどうするかは何度か考え直してきました。塾でも子どもたちが水筒を持ってくるので、水の話は身近です。

正直に書くと、私は「これが正解」という結論を持っていません。 地域の水質も家庭の事情も違うからです。

そのうえで、今回いちばん効いたのは数字を見ることそのものではありませんでした。その数字が何を指しているのかを知ったことのほうです。

「不検出」をゼロだと思っていたときと、「基準の10分の1より下」と読めるようになったあとでは、同じ資料が別のものに見えます。

あわせて読みたい

ご利用にあたっての注意

本記事は水道水の水質検査結果の読み方に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。紹介した数値や制度は執筆時点の公表資料にもとづくもので、今後改定される可能性があります。実際の水質や検査体制はお住まいの地域によって異なります。体調に不安がある場合や、水質について個別の判断が必要な場合は、お住まいの水道事業者または医師などの専門家にご相談ください。

信頼できる公的情報

この記事を書いた人

てびき

てびき
学習塾を営む二児の親/健康・栄養の情報を発信
    • コロナ以前から仕事のなかで健康と栄養の知識を学び続けてきました
    • 子どもの食育に取り組み、塾では大人にも栄養の話をしています
    • 自身のうつの経験から栄養に行き着き、ダイエットも実践中
    • 医療系の国家資格は持っていません。だから出典を明示して書いています

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免責:本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。体調に不安がある場合は医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

最終更新: 2026年8月11日

更新履歴

    • 2026年8月11日: 公開

参考にした資料

  • 厚生労働省健康局水道課長通知「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」(定量下限は原則として基準値の10分の1)
  • 水質基準に関する省令(第二十項 ペルフルオロオクタンスルホン酸及びペルフルオロオクタン酸 〇・〇〇〇〇五mg/l以下)
  • 水道法施行規則 第15条(採水の場所・検査の回数・水質検査計画の記載事項)
  • 環境省 報道発表「水質基準に関する省令の一部を改正する省令等の公布等について」(0.00005mg/L = 50ng/L)
  • 国土交通省・環境省「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査の結果(最終取りまとめ)」(年度別の検査事業数と超過事業数、濃度分布)
  • 国土交通省・環境省「水道におけるPFOS及びPFOAに関するフォローアップ調査の結果」(令和2年4月〜令和7年8月末の累計19事業)
  • 国土交通省「水道事業者等によるPFOS及びPFOA対応マニュアル」(超過時の飲用制限と給水継続)
  • 神奈川県企業局「県営水道における有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)の検査結果」(不検出=定量下限値5ng/L未満)
  • 埼玉県企業局 水質管理センター「よくある質問」(「〇〇未満」の意味)
  • 東京都水道局「令和8年度 水質検査計画」(浄水施設の出口を選定できる項目でも原則として蛇口で検査する方針)
  • 環境省「水質基準の見直しにおける検討概要」残留塩素・総トリハロメタンの個票
  • 国土交通省「ご自宅の給水管が鉛製ではないですか?」および鉛製給水管の残存件数資料

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