毎日だるい。寝ても回復しない。気分も落ちてくる。
病院に行っても「健診では異常ないですね」で終わる。そんな経験はないでしょうか。
じつは健診の標準項目には、だるさに関わる指標がいくつも入っていません。入っていない項目は、当然ながら異常として出てきません。
この記事では、疲れが続くときに確認する価値のある血液項目を整理します。あわせて、その検査に保険が使える条件も書きます。ここを知らずに「測ってください」と言うと、話がかみ合わないことがあるからです。

- まず、「休んでも回復しない」と「動いた後に悪化する」は別のものです
- 慢性疲労症候群には、診断に使える血液検査も画像検査もありません
- だるさの正体が甲状腺のことがあり、人口の4〜10%にみられます
- ヘモグロビンが正常でも、貯蔵鉄は空のことがあります
- 亜鉛は「基準値内」でも、60〜80は潜在性亜鉛欠乏という区分です
- 血清亜鉛は、いつ測るかで値が動きます
- ビタミンDの検査は2種類あり、不足を映すのは25(OH)Dのほうです
- ビタミンDは「疲れ」では保険が使えません。算定できる病名が決まっています
- 補って変わるのは、足りていなかった人だけです
- 今日やること
- よくある質問
- あわせて読みたい
- 信頼できる公的情報
- この記事を書いた人
- 更新履歴
- 参考にした資料
まず、「休んでも回復しない」と「動いた後に悪化する」は別のものです
疲れが続く状態のなかに、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼ばれるものがあります。半年以上にわたって強い疲労が続き、日常生活を送るのが難しくなる病気です。
これを他の疲れと分けているのは、疲れの強さではありません。「労作後の消耗」と呼ばれる特徴です。
簡単な家事をしただけで、翌日から1週間ベッドから起き上がれない。そういう形で出ます。
やっかいなのは、悪化が遅れてやってくることです。症状が強くなるのは活動の12〜48時間後で、数日から数週間続くこともあります。
つまり、動いた当日は平気なことがある。だから本人も周囲も「今日は元気だったのに」と受け取ってしまいます。
→ 疲れを説明するときは「どれくらいしんどいか」ではなく「動いた翌日か翌々日にどうなるか」を伝えてください。医師が見ている分かれ目はそこです。

慢性疲労症候群には、診断に使える血液検査も画像検査もありません
ここが誤解されやすいところです。半年以上続く疲労を評価するのに、決め手になる検査は0件です。
ME/CFSの診断は、問診で病歴と症状を確認し、同じように疲労を起こす他の病気を除外していく形で行われます。診断に有用な血液検査所見や画像所見は、現在のところありません。
だから「検査で異常なし」は、この病気を否定する根拠になりません。むしろ、異常が出ないほうが典型です。
そして除外という手続きがある以上、他の病気を先に調べる必要があります。以下で挙げる項目は、その除外のための検査でもあります。
→ 「異常なしと言われた」で止めないでください。何を除外したのかを聞くと、次に何を調べればいいかが見えます。
だるさの正体が甲状腺のことがあり、人口の4〜10%にみられます
甲状腺機能低下症には、だるさと重なる症状が8つあります。倦怠感、無気力、むくみ、寒がり、体重増加、動作が遅くなる、物忘れ、便秘。
並べてみると、「疲れているだけ」「気分の問題」と片づけられやすいものばかりです。
さらに、潜在性甲状腺機能低下症という状態があります。甲状腺ホルモンの血中濃度は正常のまま、TSHだけが基準の上限を超えている状態です。
日本内分泌学会の解説によれば、この状態の人の多くは、はっきりした症状を感じていません。そして潜在性の甲状腺機能異常は、一般人口の4〜10%にみられます。女性と高齢者に多いとされます。
10人に1人近くという頻度は、疲れの原因を探すうえで無視できません。
→ 疲れとむくみと寒がりが重なっているなら、TSHを測ってもらえないか相談してください。甲状腺の検査は、症状があれば保険の対象になります。

ヘモグロビンが正常でも、貯蔵鉄は空のことがあります
健診の貧血の項目は、ふつうヘモグロビンです。ここが基準内なら「貧血なし」と判定されます。
ところが体の鉄には、血液の中で酸素を運んでいる分と、蓄えとして貯めてある分があります。蓄えのほうを映すのがフェリチンです。
減っていく順番は、蓄え、それから血液です。つまり貯蔵鉄が先に減り、ヘモグロビンが下がるのはその後になります。
日本鉄バイオサイエンス学会は、血清フェリチン12ng/mL未満を鉄欠乏の基準としています。ヘモグロビンが正常でもフェリチンだけが低い状態は、実際に存在します。
そしてフェリチンは、健診の標準項目に入っていません。測っていないものは、異常として出てきようがありません。
→ 疲れやすさが続いていて、月経がある女性なら、フェリチンを測れないか聞いてみてください。ヘモグロビンだけでは蓄えの状態が分かりません。

亜鉛は「基準値内」でも、60〜80は潜在性亜鉛欠乏という区分です
日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針2024」では、血清亜鉛の基準値を80〜130µg/dLとしています。
注目したいのはその下です。指針は60µg/dL未満を亜鉛欠乏症、60〜80µg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏として区分しています。
つまり75という値は、基準値の下限を割っています。しかし欠乏症の基準にも達していない。この帯にいる人は、検査結果の紙の上では目立ちません。
ただし注意点があります。亜鉛欠乏症と診断するには、数値だけでなく臨床症状が要ります。皮膚炎、口内炎、脱毛症、褥瘡、食欲低下、発育障害などのうち、1項目以上を満たすことが求められます。
数値が低いだけでは診断になりません。ここは正直に書いておきます。
→ 口内炎を繰り返す、味を感じにくい、食欲が落ちた。こうした症状が重なっているなら、血清亜鉛を測る相談の材料になります。
血清亜鉛は、いつ測るかで値が動きます
同じ指針にもう1つ、見落とされやすい記述があります。血清亜鉛は早朝空腹時に測定することが望ましい、というものです。60、80、130という区切りを読むときは、この一文とセットで見てください。
裏を返せば、時間帯や食事の影響を受けるということです。午後に、昼食のあとで測った値と、早朝空腹時に測った値は、同じ人でも一致するとはかぎりません。
採血の時間まで気にして受診する人は、あまりいないと思います。私も知りませんでした。
→ 亜鉛を測ってもらうなら、午前中の空腹の状態で受診できないか調整してみてください。同じ1回の採血でも、条件をそろえたほうが読み取りやすくなります。

ビタミンDの検査は2種類あり、不足を映すのは25(OH)Dのほうです
ここが今回いちばん伝えたいところです。
ビタミンDの血液検査には、性質の違う2つがあります。
ひとつが25-ヒドロキシビタミンD、略して25(OH)D。もうひとつが1,25-ジヒドロキシビタミンD、略して1,25(OH)₂Dです。
名前が似ているので同じものに見えます。しかし役割が違います。
25(OH)Dは、体内のビタミンDが足りているかどうかの評価に使われる指標です。一方の1,25(OH)₂Dは腎臓で活性化された形で、血液中のカルシウムとリンの調節に働いています。
足りているかを知りたいなら、見るのは25(OH)Dのほうです。
→ 「ビタミンDを測ってください」ではなく「25(OH)Dを測ってもらえますか」と伝えてください。ひとこと足すだけで、受け取る情報が変わります。

ビタミンDは「疲れ」では保険が使えません。算定できる病名が決まっています
ではお願いすれば測ってもらえるかというと、そう単純でもありません。
日本の保険診療では、検査ごとに「この病名のときに算定できる」という条件が決められています。ビタミンDの2つの検査も例外ではありません。
| 検査 | 保険で算定できる主な病名 |
|---|---|
| 25(OH)D | ビタミンD欠乏性くる病、ビタミンD欠乏性骨軟化症(診断時1回、以降は3か月に1回) |
| 1,25(OH)₂D | 慢性腎不全、特発性副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD依存症I型、低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病 |
どちらのリストにも、疲労や倦怠感は入っていません。
つまり「疲れが取れないので測ってほしい」という理由では、保険の対象になりません。断られたとしても、その医師が非協力的なわけではないのです。制度がそうなっています。
測ること自体は可能で、その場合は自費になります。費用は医療機関によって異なるので、事前に確認してください。
こうして決まっていることを一次資料で確かめると、思っていたのと違うことがあります。花粉症の薬をいつから飲み始めるかも同じで、「飛散2週間前から」の出どころを探した記事では、よく聞くその説明が現行の推奨としては見つかりませんでした。
→ 保険で測れないと言われたら、理由を「制度の問題」として受け取ってください。そのうえで自費で測るかどうかは、費用を聞いてから決めれば十分です。
補って変わるのは、足りていなかった人だけです
ここまで4つの項目を挙げました。甲状腺、鉄、亜鉛、ビタミンD。
「じゃあ全部サプリで補えばいいのでは」と思われたかもしれません。ここは正直に書きます。
不足していた人がそれを補ったときに体調が変わることは、あります。それは欠乏を埋めたからです。
一方で、足りている人が上乗せしても、同じことは起こりません。埋めるべき穴がないからです。
だから順番は、飲むことではなく測ることが先になります。測らずに飲むと、変わらなかったときに理由が分かりません。
そして、栄養の不足を埋めることと、慢性疲労症候群そのものに働きかけることは、別の話です。前者ができても後者が解決するとはかぎりません。この2つを混ぜないでください。
→ サプリを買う前に、まず1回測ってください。順番を逆にすると、お金も時間も判断材料も減ります。
私自身、うつを経験したときに栄養に行き着きました。ただ、あのころ手当たりしだいに試したものの多くは、いま思えば測らずに飲んでいたものです(※個人の感想です)。
今日やること
| # | やること | なぜ |
|---|---|---|
| 1 | 症状を日付つきでメモする。特に「動いた翌日どうだったか」 | 医師が見ている分かれ目がそこだからです |
| 2 | 直近の健診結果を持って受診する | 何を測っていないかが分かります |
| 3 | だるさ、むくみ、寒がりが重なるならTSHを相談する | 潜在性は自覚症状が出にくいためです |
| 4 | 月経があってフェリチン未測定なら、測れないか聞く | ヘモグロビン正常でも蓄えは空のことがあります |
| 5 | 亜鉛を測るなら午前中の空腹時に受診する | 測る条件で値が動くからです |
| 6 | ビタミンDは「25(OH)D」と項目名で伝える | 2種類あり、見るべき指標が決まっています |

念のため
・ここに挙げた項目は、疲れの原因を探す手がかりであって、診断そのものではありません
・数値が基準を外れていても、原因が他にあることがあります
・症状が続く場合、体重が急に減った場合、発熱がある場合は、早めに医療機関を受診してください
よくある質問
Q1. 健診で「異常なし」でした。それでも調べる意味はありますか?
あります。健診の標準項目にフェリチンや血清亜鉛、25(OH)Dは通常含まれていません。測っていない項目は異常として出てきません。
Q2. 慢性疲労症候群は血液検査で分かりますか?
分かりません。診断に有用な血液検査所見や画像所見は、現在のところないとされています。診断は問診と、他の病気の除外によって行われます。
Q3. 「動いた後に悪化する」がよく分かりません。
活動した当日ではなく、12〜48時間後に症状が強くなる現象を指します。数日から数週間続くこともあります。当日元気でも翌々日に動けなくなるなら、それにあたる可能性があります。
Q4. フェリチンはいくつから低いのですか?
日本鉄バイオサイエンス学会は12ng/mL未満を鉄欠乏の基準としています。ただし判断は他の検査値と症状を合わせて行われるので、数値だけで自己判断しないでください。
Q5. 血清亜鉛が75でした。基準値内ですか?
基準値は80〜130µg/dLなので、下限を割っています。診療指針では60〜80未満を潜在性亜鉛欠乏として区分しています。ただし亜鉛欠乏症の診断には、あわせて臨床症状が求められます。
Q6. ビタミンDのサプリを飲めば疲れが取れますか?
そうとは言えません。不足を補うことと、症状の原因に働きかけることは別の話です。まず25(OH)Dを測り、結果を主治医に見てもらってください。
Q7. 25(OH)Dを保険で測ってもらえませんか?
疲労を理由にした場合は対象外です。算定できる病名がビタミンD欠乏性くる病と骨軟化症に限られているためです。自費で測ることは可能なので、費用を確認してください。
Q8. 精神科に行くように言われました。
気分の落ち込みを伴うことはあり、そこへの対応が必要な場合もあります。ただしそれは、体の側の検討を終わりにする理由にはなりません。両方を並行して相談してください。
Q9. 接種のあとから続いているのですが。
接種後に症状が続く状態については別に整理しています。制度の面も含めて、「コロナワクチン後遺症かも」と思ったらを参照してください。
Q10. 食事で足りるものですか?
不足の程度によります。まず何がどれくらい足りないかを知ることが先です。たんぱく質の目安はたんぱく質が足りないを数えてみた、野菜の量は野菜350gに届いている人は5人に1人にまとめています。
あわせて読みたい
本記事は公開情報の整理を目的とした情報提供であり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。紹介した検査項目は原因を探す手がかりであり、数値の解釈は個人の状態によって異なります。持病のある方、通院中・服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断でサプリメント等を用いず、必ず医師・薬剤師などの専門家にご相談ください。症状が続く場合は医療機関を受診してください。
信頼できる公的情報
- 国立精神・神経医療研究センター「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは」
- 日本内分泌学会「甲状腺機能低下症」「潜在性甲状腺機能異常」
- 日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針2024」
- 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」
- 厚生労働省「e-ヘルスネット」
この記事を書いた人
- コロナ以前から仕事のなかで健康と栄養の知識を学び続けてきました
- 子どもの食育に取り組み、塾では大人にも栄養の話をしています
- 自身のうつの経験から栄養に行き着き、ダイエットも実践中
- 医療系の国家資格は持っていません。だから出典を明示して書いています
免責:本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。症状がある場合は医師・薬剤師など専門家にご相談ください。
最終更新: 2026年8月16日
更新履歴
- 2026-08-16 初版公開
参考にした資料
- 国立精神・神経医療研究センター 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは
- 大阪府 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)について
- 兵庫県 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)について
- 日本内分泌学会 甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能異常
- 一般社団法人日本臨床栄養学会 亜鉛欠乏症の診療指針2024
- 日本鉄バイオサイエンス学会 鉄剤の適正使用による貧血治療指針
- 各検査項目の保険算定要件(25-OHビタミンD、1α,25-(OH)2ビタミンD)



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