食物繊維の「目標量」は、理想の数字ではありません。厚労省の資料を読んで確かめた

食物繊維の目標量は理想の数字ではないと解説する記事のアイキャッチ|食物繊維 目標量 栄養学

「日本人は食物繊維が足りていません」

健康の記事を読んでいると、必ず出てきます。私も塾で保護者の方に栄養の話をするとき、この話をしたことがあります。

ただ、あるとき気になりました。

足りていない、の「足りている状態」って誰がどう決めたんだろう、と。

調べてみたら、思っていた話と違いました。あの数字は「これだけ摂れば健康にいい」という理想値ではありません。厚生労働省の資料に、はっきりそう書いてあります。

まず、数字を並べます

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の目標量です。

年齢 男性 女性
18〜29歳 20g以上 18g以上
30〜49歳 22g以上 18g以上
50〜64歳 22g以上 18g以上
65〜74歳 21g以上 18g以上
75歳以上 20g以上 17g以上

対して、実際に食べている量。令和6年の国民健康・栄養調査(20歳以上)です。

  • 男女計 18.1g
  • 男性 19.2g
  • 女性 17.1g

ここだけ見ると、そこまで絶望的な差ではありません。ところが年齢別に開くと、話が変わりました。

年齢 男性の摂取量 女性の摂取量
20代 17.6g 15.2g
30代 18.3g 14.9g
40代 18.1g 15.8g
50代 18.9g 16.8g
60代 19.6g 17.9g
70代 20.6g 18.8g

目標量と重ねてみます。

  • 40代男性:目標22g に対して18.1g。3.9g足りない
  • 30代男性:目標22g に対して18.3g。3.7g足りない
  • 30代女性:目標18g に対して14.9g。3.1g足りない
  • 70代男性:目標20g に対して20.6g。足りている

つまり足りていないのは働き盛りの世代で、高齢の層はむしろ満たしています。しかも高齢になるほど目標量は下がるのに、摂取量は上がる。差が二重に開く構造です。

「日本人は食物繊維が足りていません」という一括りは、けっこう雑だったんだなと思いました。足りていないのは、たぶんあなたが忙しい年代にいる場合です。

年齢層別に食物繊維の目標量と実際の摂取量を比べた図。40代男性は3.9g不足、30代女性は3.1g不足、70代男性は達成|食物繊維 目標量

ここからが本題です

問題は、この目標量が何なのかということでした。

食事摂取基準の資料には、目標量の定義がこう書かれています。

目標量:生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量(tentative dietary goal for preventing life-style related diseases:DG)

英語の略称の話が続きます。そして厚労省の資料は、わざわざ辞書を引いて注記を入れています。

tentative:試みの、仮の(新英和大辞典第六版)

自分たちで「仮の」と書いているんです。

さらに、こう続きます。

諸外国の食事摂取基準や疾病予防ガイドライン、現在の日本人の摂取量・食品構成・嗜好などを考慮し、実行可能性を重視して設定することとした。

「実行可能性を重視して」。つまり、届く見込みのある数字にしてある、ということです。

では、本当はいくつなのか

同じ資料に書いてあります。

少なくとも1日当たり25〜29gの食物繊維の摂取が、様々な生活習慣病のリスク低下に寄与すると報告されているが、食物繊維摂取量と生活習慣病リスクとの間に明らかな閾値は存在しない

25〜29g。目標量よりだいぶ上です。根拠として挙げられているのは Reynolds らが Lancet に発表したメタアナリシス(2019年)で、総死亡率・2型糖尿病発症率・大腸がん発症率との関係を調べたものです。

そして目標量の決め方が、ここではっきり書かれます。

WHOのガイドラインなどを踏まえて、少なくとも1日当たり25gの食物繊維を摂取した方が良いと考えられ、この値と日本人の摂取量との中間値を参照値とした

理想の25gと、現実の摂取量。その中間を取ったのが目標量です。

だから男性22gという数字は「22g摂れば十分」という意味ではありません。「25gが望ましいけれど、今の日本人の食生活からいきなりそこは無理だろうから、まず真ん中を目指そう」という数字です。

ここは知っておいて損がないと思いました。目標量に届いた時点でゴール、ではないわけです。

もうひとつ、数字が比べにくくなっています

これは調べていていちばん驚いた点でした。

食品成分表の測定法が変わっています。

  • 七訂まで:プロスキー変法
  • 八訂から:AOAC.2011.25法(多くの食品で採用)

新しい方法では、これまで測れていなかった低分子量水溶性食物繊維と難消化性でん粉も測ります。その分、同じ食品でも成分値が高く出ます。

ところが目標量のほうは、七訂相当の測定法で算定された研究をもとに決められています。

つまり新しい成分表やアプリで計算した数字を、そのまま目標量と比べると噛み合いません。食事は変わっていないのに、数字だけ増えて「目標達成」になることがありえます。

食事摂取基準の資料も、今後の課題としてこの点を挙げています。測定法変更の影響を明らかにする必要がある、と。

七訂のプロスキー変法と八訂のAOAC法で測る範囲が違うことを示す対比図。八訂では低分子量水溶性食物繊維と難消化性でん粉も加わり数値が高く出る|食物繊維 測定法

栄養管理アプリを使っている方は、そのアプリがどの版の成分表を使っているか、一度見てみてもいいかもしれません。私も確認したら、表示が版によって違っていました。

3gを足す、という話に変える

数字の性格が分かると、やることはシンプルになります。

30〜40代なら、目標量との差は3〜4g。まずここを埋める。25gはその先の話として置いておく。

主食を替えるのがいちばん効きます。白米を麦ごはんや玄米にする、食パンを全粒粉のものにする。副菜を1品増やす。豆や海藻、きのこを意識する。

食物繊維を3〜4g足すための置き換え図。白米を麦ごはんへ、食パンを全粒粉パンへ、副菜をもう1品|食物繊維 増やし方

どれも目新しくありません。目新しくないのですが、目標量の性格を知ったうえでやるのと、なんとなく「腸活にいいらしい」でやるのとでは、続き方が違う気がしています。

サプリメントで一気に埋める考え方もあります。ただ、食事摂取基準はあくまで通常の食品からの摂取を前提に組まれています。持病のある方や服薬中の方は、増やす前に医師や薬剤師にご相談ください。急に大量に増やすとお腹の張りを感じる人もいます。

確かめられたこと、言い切れないこと

資料で確かめられたこと

  • 目標量は2025年版で示されており、30〜64歳男性は22g以上、成人女性はおおむね18g以上
  • 令和6年の20歳以上の平均摂取量は男女計18.1g、男性19.2g、女性17.1g
  • 年齢別では30〜40代の不足が最も大きく、70代は目標量を満たしている層がある
  • 目標量は「tentative(仮の)」と定義され、実行可能性を重視して設定されている
  • リスク低下に寄与するとされるのは25〜29gという報告があり、目標量は25gと現実の中間値
  • 食物繊維摂取量と生活習慣病リスクの間に明らかな閾値は存在しない
  • 測定法が七訂と八訂で変わり、成分値が高く出るようになった

まだ言い切れないこと

  • 目標量に届いたからといって、何かが起きる・起きないと言えるわけではありません。閾値がないというのはそういう意味です
  • 測定法変更が摂取量の評価にどれだけ影響するかは、厚労省自身が今後の課題としています
  • 食物繊維を増やすことと、特定の症状や体調の変化との関係を、この記事の資料だけで結論づけることはできません

このあたりを混ぜないほうがいいと思っています。腸内細菌と体重の話でも同じことを書きました。研究で確かめられている範囲と、広告で語られている範囲には距離があります。

てびきの場合

私は朝食が菓子パン1個で終わることが多かったんですが、そこに納豆と味噌汁を足すようにしました。理由は食物繊維というより、単に昼まで持たなかったからです。

数字を計算してみたら、それだけで2gくらい増えていました。狙っていなかったのに増えていた、というのが実際のところです。体調がどうこうという話はしません。個人の感想ですし、それを効果として書くのは違うと思っています。

続いている理由は、たぶん面倒じゃないからです。

よくある質問

Q1. 目標量に届けば十分ですか?

厚労省の資料では、リスク低下に寄与するとされるのは25〜29gという報告が紹介されています。目標量はそこへの中間地点として設定されたものです。届いた時点で完了、という性格の数字ではありません。

Q2. 「日本人は14gしか摂れていない」と聞きました

調査年が古いか、平均値ではなく中央値の可能性があります。令和6年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の平均が男女計18.1gです。ただし30代女性は14.9gなので、世代によっては14g台に近い層もあります。数字を引用するときは、調査年と対象年齢、平均か中央値かをご確認ください。

Q3. サプリで補ってもいいですか?

食事摂取基準は通常の食品からの摂取を前提に策定されています。補助として使う方もいますが、持病のある方・服薬中の方・妊娠中の方は、必ず医師や薬剤師にご相談ください。

Q4. 水溶性と不溶性、どちらを摂ればいいですか?

2025年版の目標量は水溶性・不溶性を分けずに総量で示されています。比率の目安が独り歩きしている面があるので、まずは総量で考えるほうが原典に忠実です。

Q5. アプリの数字はあてになりますか?

使っている食品成分表の版によって値が変わります。八訂以降の値は測定法の関係で高めに出るため、七訂相当で算定された目標量と直接比べると噛み合いません。傾向を見る道具として使うのがよいと思います。

Q6. 便秘が続いています

食物繊維の話とは切り離して考えてください。続く便秘は医療機関で相談すべき状態です。自己判断で食事だけ変えて様子を見る、ということはしないでください。

Q7. 一気に増やしても大丈夫ですか?

急に大幅に増やすと、お腹の張りや不快感を感じる人がいます。感じ方には個人差があります。少しずつ増やし、水分もあわせて摂るのが一般的な考え方です。

Q8. 子どもにも目標量がありますか?

あります。3〜5歳で8g以上、10〜11歳で13g以上など、年齢別に設定されています。原典の表でご確認ください。

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ご利用にあたっての注意

本記事は栄養に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。効果や感じ方には個人差があります。持病のある方、通院中・服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断で実践せず、必ず医師・薬剤師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

てびき

てびき
学習塾を営む二児の親/健康・栄養の情報を発信
    • 子どもの食育に取り組み、塾では大人にも栄養の話をしています
    • 自身のうつの経験から栄養に行き着き、ダイエットも実践中
    • 医療系の国家資格は持っていません。だから出典を明示して書いています

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免責:本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。症状がある場合は医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

最終更新: 2026年8月2日

更新履歴

    • 2026-08-02 初版公開

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